採用時に確認したいポイントと届出・申請の実務をわかりやすく解説
外国人社員が転職して入社する場合、会社として気になるのが
「今の在留資格のままで働けるのか」
「会社側で何を確認・対応すべきか」
という点ではないでしょうか。
結論からいうと、在留カードに就労可能な在留資格が書かれていても、転職後の仕事内容がその在留資格に合っていなければ安心できません。
特に「技術・人文知識・国際業務」などの就労系在留資格では、仕事の内容と本人の学歴・職歴、そして新しい勤務先での業務内容との整合性が重要になります。
この記事では、転職した外国人社員を採用する会社が注意すべきポイントを、入管実務と労務実務の両面からわかりやすく解説します。
採用のあとで慌てないように、先に地雷を見ておきましょう。踏まないのが一番ですが、知っているだけでもかなり違います。
まず結論:会社が最初に確認すべき3点
転職者を採用する会社は、まず次の3点を確認するのが基本です。
- 現在の在留資格で、自社の業務に従事できるか
- 在留期限がいつまでか
- 必要な届出や申請が漏れなくできるか
特に重要なのは、「在留資格の名前」だけで判断しないことです。
たとえば「技術・人文知識・国際業務」で在留している方でも、前職と新職の仕事内容が大きく変わる場合は、単純に「就労ビザだから大丈夫」とは言い切れません。出入国在留管理庁は、同資格の対象を、自然科学・人文科学の知識を要する業務や外国文化に基盤を有する業務と整理しており、仕事内容がその範囲に入るかが前提になります。
1. 在留カードだけ見て「就労OK」と判断しない
企業実務で一番多い誤解がこれです。
在留カードに
「技術・人文知識・国際業務」
「技能」
などの在留資格が記載されていると、つい「働ける人なんだな」と考えがちです。
ただ、入管が見ているのは**“何の在留資格を持っているか”だけでなく“どんな仕事をするのか”**です。
たとえば、前職では通訳・海外営業として適法に働いていた方が、転職後に現場作業中心の業務に就く場合、在留資格との整合性が問題になることがあります。
在留資格は名札ではなく、活動内容の許可証のようなものです。名札だけ見て配属すると、あとで「あれ、業務が違いませんか?」となりかねません。
2. 転職後の仕事内容が在留資格に合っているか確認する
特に「技術・人文知識・国際業務」で採用する場合は、以下を確認したいところです。
確認ポイント
- 業務内容が専門的・技術的な内容か
- 単純作業が主業務になっていないか
- 本人の学歴・専攻・職歴と関連性があるか
- 雇用契約書や労働条件通知書に業務内容が明確に書かれているか
出入国在留管理庁は、「技術・人文知識・国際業務」の申請資料として、労働条件を明示する文書や、学歴・職歴を証明する資料の提出を求めています。つまり、審査上も、仕事内容と本人の経歴とのつながりが重要だということです。
会社側としては、採用前の段階で
「この人が働けるか」ではなく、「この仕事で働けるか」
まで見た方が安全です。
3. 在留期限を必ず確認する
これも基本ですが、非常に大切です。
たとえば、転職時点で在留期限が数か月後に迫っている場合、採用後すぐに更新対応が必要になることがあります。
しかも、更新時には新しい勤務先の資料や仕事内容が審査対象になるため、「入社してから考えよう」はあまりおすすめできません。
出入国在留管理庁は、在留資格「技術・人文知識・国際業務」の在留期間を5年、3年、1年又は3月と案内しています。あわせて、申請時には必要書類が不足していると審査が大幅に遅れたり、不利益処分となり得るとも明記しています。
入社直後に更新が迫っている場合は、
「採用」=「更新準備スタート」
くらいの感覚でいた方が実務はスムーズです。
4. 本人には14日以内の入管届出が必要
転職した外国人本人には、前の会社との契約終了や新しい会社との契約締結について、14日以内に出入国在留管理庁へ届出を行う義務があります。これは「技術・人文知識・国際業務」など、契約機関に基づいて活動する在留資格を持つ中長期在留者が対象です。
この届出は本人義務ですが、会社としても放置しない方が安全です。
なぜなら、本人が届出をしていないと、後の更新や変更の場面で説明がややこしくなることがあるからです。
実務上の会社対応
- 入社時のオリエンテーションで届出の必要性を案内する
- いつ届出したかを本人に確認する
- 必要なら行政書士等と連携してサポートする
「本人の義務だから会社は知らない」は法的には分かれていても、実務上はあまり得しません。あとで会社も巻き込まれがちです。
5. 就労資格証明書の取得を検討する
転職者採用で不安がある場合、就労資格証明書の活用はかなり有効です。
出入国在留管理庁によると、就労資格証明書は、外国人本人が現在の在留資格で行うことができる就労活動を証明する文書です。勤務先や活動内容に変更がある場合には、新たな勤務先や活動内容の詳細が分かる書類を提出して申請でき、標準処理期間は勤務先変更がある場合などで1か月から3か月とされています。手数料は2,000円、オンライン申請は1,600円です。
就労資格証明書を検討したい場面
- 前職と今度の業務内容がかなり違う
- 在留資格との適合性に少し不安がある
- 更新前にリスクを整理しておきたい
- 会社として適法就労を明確に確認したい
必須ではありませんが、「大丈夫だと思う」より「確認済みです」の方が強いです。採用担当としては、後者の方が夜よく眠れます。
6. 会社側にもハローワークへの届出義務がある
入管の届出とは別に、会社側にはハローワークへの「外国人雇用状況の届出」義務があります。厚生労働省は、外国人の雇入れ・離職の際、事業主は原則としてその届出を行う必要があると案内しており、対象は在留資格「外交」「公用」および特別永住者を除く外国人です。届出を怠ったり、虚偽の届出をした場合は30万円以下の罰金の対象になり得ます。
また、雇用保険の被保険者となる外国人は、雇入れは翌月10日まで、離職は翌日から起算して10日以内が届出期限です。被保険者とならない場合は、雇入れ・離職ともに翌月末日までとされています。
ここで混同しやすいポイント
- 入管への14日以内の届出 → 主に本人が行う
- ハローワークへの外国人雇用状況の届出 → 会社が行う
似ているようで別物です。
ここ、実務ではわりと“うっかり双子”です。
7. 在留カードの確認は「目視だけ」で終わらせない
厚生労働省は、外国人雇用状況の届出にあたり、在留カードや旅券の提示を求めて届出事項を確認すること、さらに在留カード等読取アプリケーションの活用も案内しています。
会社としては、少なくとも次の確認はしておきたいところです。
採用時の確認項目
- 在留カードの有効期限
- 在留資格の種類
- 就労制限の有無
- 資格外活動許可欄の記載
- 券面情報と本人申告内容の一致
もちろん、在留カードの確認だけで法的適合性がすべて判断できるわけではありません。
ただ、最低限の確認をせずに採用するのは、会社としてかなり危険です。
8. 「転職したから在留資格変更が必須」とは限らない
これもよくある誤解です。
転職しただけで、必ずしも在留資格変更許可申請が必要になるわけではありません。
同じ在留資格の範囲内で適法に就労できる業務に転職するのであれば、変更申請ではなく、届出対応や更新対応で足りる場合があります。
一方で、新しい仕事が現在の在留資格ではカバーしきれない場合は、在留資格変更の検討が必要になります。
変更申請を考えたい例
- 技人国から経営・管理に近い業務へ移る
- 技人国のはずなのに、実態は単純作業中心
- 研究、教育、技能など別の在留資格が適切な仕事内容に変わる
つまり、転職=自動で変更申請ではなく、転職後の仕事内容次第です。
9. 会社規模やカテゴリーで更新・申請の負担が変わる
「技術・人文知識・国際業務」では、所属機関のカテゴリーによって提出書類が変わります。出入国在留管理庁は、上場企業や一定条件を満たす企業等をカテゴリー1、源泉徴収税額が一定以上の団体等をカテゴリー2、一般的な団体・個人をカテゴリー3、それ以外をカテゴリー4として整理しています。カテゴリー1・2は比較的簡略化されますが、カテゴリー3・4では会社資料や仕事内容の説明資料の重要性が増します。
そのため、中小企業や設立間もない会社では、転職者の更新時や就労資格証明書申請時に、会社実態や雇用の安定性をどう示すかがより重要になりやすいです。
10. 会社が準備しておきたい採用時チェックリスト
最後に、会社側の実務チェックリストをまとめます。
採用前
- 在留カードの確認
- 在留資格と在留期限の確認
- 仕事内容が在留資格に合っているか確認
- 学歴・職歴との関連性の確認
- 雇用契約書・労働条件通知書の整備
入社時
- 本人に入管への14日以内届出を案内
- ハローワークへの外国人雇用状況届出の準備
- 必要に応じて就労資格証明書の取得を検討
入社後
- 更新時期の管理
- 職務内容が採用時説明から逸脱していないか確認
- 異動・昇進で業務内容が大きく変わる場合は再確認
ここまでできていれば、かなり事故は減ります。
採用はゴールではなく、入管実務的にはむしろスタートです。
まとめ
転職した外国人社員を採用するとき、会社が特に注意したいのは次の4点です。
- 在留資格の名前ではなく、仕事内容との適合性を見ること
- 本人の14日以内の入管届出を見落とさないこと
- 会社側のハローワーク届出を確実に行うこと
- 不安があれば就労資格証明書の取得を検討すること
外国人採用では、書類さえ揃えばOKというより、実際の仕事内容・届出・更新管理まで含めて整っているかが大事です。
「採れたから大丈夫」ではなく、「採った後も適法に働ける状態を維持できるか」まで見ておくと、かなり安心です。
