
2026年3月、政府は入管法の改正案を国会に提出しました。
今回の改正案の大きなポイントは、短期来日者向けの電子渡航認証制度(JESTA)の創設と、在留資格の変更・更新などに関する手数料の上限額の見直しです。
結論からいうと、今回の改正案は、
- 観光・短期滞在で来日する外国人への事前チェックを強化すること
- 在留手続にかかるコストや制度運用を見直すこと
が柱です。
企業の採用実務や、すでに日本に住んでいる外国人の在留手続にも関係する可能性があるため、早めに概要を押さえておく価値があります。
制度の名前は長くて少し“ラスボス感”がありますが、中身は分けて見ればそこまで難しくありません。今回はやさしく整理します。
そもそも、今回の改正案は何を目的にしているのか
内閣法制局が公表している提出理由によると、今回の改正案は、厳格な出入国管理を実現しつつ、上陸審査の手続をより円滑にすることを目的としています。あわせて、在留資格変更許可等の手数料の上限額引上げも盛り込まれています。
背景としては、訪日外国人の増加があります。出入国在留管理庁の資料では、令和7年の外国人新規入国者数は過去最高の約3,918万人で、短期滞在で上陸許可を受けた人は約3,846万人、その約8割が査証免除対象者とされています。こうした状況を受け、事前スクリーニングを強化する必要性が高まったと説明されています。
改正案のポイント1:JESTA(電子渡航認証制度)の創設
今回の改正案で特に注目されているのが、**JESTA(Japan Electronic System for Travel Authorization)**の創設です。
これは、査証(ビザ)が不要な国・地域の外国人が、短期間の観光などで日本に来る前に、オンラインで事前認証を受ける仕組みです。
要するに、
「ビザ免除だからそのまま来日」ではなく、
来日前にオンラインで一定の情報を提出して、問題がないか事前確認を受けるイメージです。
JESTAで何が変わるのか
改正案の説明では、査証を必要としない外国人で、短期間滞在して観光等を行おうとする者について、認証を受けたことを上陸の条件とする制度を設けるとされています。また、認証を受けた場合には、上陸許可の証印に代わる措置を可能にする内容も含まれています。
つまり、実務的には次のような変化が想定されます。
- 短期来日者は、来日前にオンライン手続が必要になる可能性がある
- 入国審査は、空港だけでなく来日前の段階からチェックが始まる
- 審査の効率化と、問題のある来日者の早期把握が進む可能性がある
政府の「不法滞在者ゼロプラン」では、JESTAについて2030年導入予定を前倒しし、2028年度中の導入を目指すとされています。
改正案のポイント2:在留手続の手数料見直し
今回の改正案では、在留資格の変更・更新、永住許可申請などに関する手数料の上限額引上げも盛り込まれています。内閣法制局の提出理由でも、在留資格の変更の許可等に係る手数料の額の上限額を引き上げると明記されています。
この点は、企業にも外国人本人にも影響が出やすいところです。
外国人本人への影響
外国人本人にとっては、将来的に
- 在留期間更新
- 在留資格変更
- 永住許可申請
などの費用負担が増える可能性があります。
まだ「改正案」の段階なので、実際の徴収額が直ちに確定しているわけではありませんが、少なくとも法改正の方向性としては、受益者負担の見直しが進んでいると見てよいでしょう。
企業への影響
企業側では、外国人社員の在留手続を会社がサポートしているケースも多いため、
- 更新・変更の実費負担を会社が持つか
- 今後の採用コストにどう織り込むか
- 申請件数の多い会社ほど年間コストがどう変わるか
といった視点での見直しが必要になります。
特に、特定技能や技術・人文知識・国際業務など、継続的に更新・変更申請が発生する企業では、地味に見えて実は効いてくる論点です。
“地味に効く固定費”は、だいたい後でボディーブローみたいに来ます。
事業者にとっての実務上の影響
企業が今回の改正案で特に意識したいのは、次の3点です。
1. 採用コストと在留管理コストの再確認
外国人雇用では、給与や社会保険だけでなく、在留資格に関する更新・変更手続も実務コストです。
改正により手数料面の負担が増える可能性があるため、採用計画や人件費管理の中に在留管理コストを組み込む視点がより重要になります。
2. 短期来日者を受け入れる事業では事前確認が重要に
海外本社スタッフ、短期出張者、商談目的の来日者などが多い企業では、今後JESTA導入により、渡日前の準備フローが変わる可能性があります。
航空券とホテルだけ押さえて安心、という時代ではなく、事前認証の有無を確認する実務が必要になるかもしれません。
3. 社内説明・本人説明の準備
制度改正の話は、外国人本人からすると不安材料にもなります。
「何が決まっていて、何がまだ改正案なのか」を整理して伝えられるよう、会社側も社内説明用の簡単な資料を持っておくと実務がスムーズです。
外国人本人にとっての実務上の影響
外国人本人の視点では、今回の改正案は大きく2つの意味があります。
1. 短期来日では“事前手続”の意識が必要に
観光・親族訪問・短期商用などで来日する人のうち、査証免除対象者には、将来的にJESTA対応が必要になる可能性があります。
これまでよりも、来日前にやることが一つ増えるイメージです。
2. 中長期在留者は費用面に注意
すでに日本に在留している方にとっては、更新や変更、永住申請などの費用負担が将来見直される可能性があるため、
- 申請のタイミング
- 必要書類の準備
- 今後の生活設計
を少し早めに考えておく意味があります。
特に永住や家族呼寄せを見据えている方は、制度の動きを継続的にチェックした方が安心です。
この改正案で「すぐに変わる」と思い込まないことが大切
ここは実務上、とても大事です。
今回の内容は2026年3月10日に国会提出された改正案であり、まだ成立・施行が確定したものではありません。国会審議の過程で修正される可能性があります。
したがって、現時点では次のように整理するのが安全です。
- 決まったことではなく、あくまで改正案
- ただし、今後の方向性としてはかなり重要
- 特に企業実務では、今のうちに影響を見積もっておく価値がある
法律の世界では、フライングで断定するとあとで少し気まずいので、ここは慎重さが勝ちです。
今のうちにやっておきたい対応
事業者の方
- 外国人雇用の在留手続を誰が管理しているか確認する
- 更新・変更手数料の見直し可能性を予算に入れる
- 短期来日者の受入れフローを整理する
- 顧問行政書士や社労士と制度改正の影響を共有する
外国人本人の方
- 更新・変更・永住など今後の予定を整理する
- 現在の在留期限を再確認する
- 改正情報をうのみにせず、正式発表ベースで確認する
- 不安がある場合は早めに専門家へ相談する
まとめ
2026年の入管法改正案は、主に
- JESTA(電子渡航認証制度)の創設
- 在留手続の手数料上限額の見直し
という2つのポイントが中心です。
企業にとっては、外国人雇用コストと短期来日管理の見直しが課題になり、
外国人本人にとっては、将来の在留手続の費用や準備への影響が気になるところです。
もっとも、現時点ではまだ改正案です。
今後の審議状況や施行時期を見ながら、必要に応じて具体的な対応を進めるのがよいでしょう。