赤字・小規模事業でも押さえたいポイントを解説
経営・管理ビザの更新が近づくと、よく出てくる不安が
「売上がまだ小さいけど大丈夫か」
「赤字だと更新できないのか」
「どこまで事業実態を見られるのか」
という点です。
結論からいうと、更新は売上額だけで決まるわけではありません。
ただし、売上が小さい、赤字が続いている、資金繰りが不安定、事業の動きが見えないといった場合は、事業の継続性・安定性・実態をどう説明するかがかなり重要になります。出入国在留管理庁は、「経営・管理」の在留資格について、外国人が事業の経営又は管理に実質的に参画していること、そして事業所の確保(存在)や事業規模等の要件を満たしていることが必要だと示しています。
つまり、更新のポイントは
「売上が高いか」だけではなく、
「本当に事業が動いていて、今後も継続していけるか」
です。
入管は数字も見ますが、数字の“意味”も見ます。そこがミソです。
1. 経営・管理ビザ更新でまず見られること
在留期間更新許可申請は、現在の在留資格を変えずに引き続き在留するための手続で、出入国在留管理庁は、更新の審査基準として、現在の在留資格に該当する活動を継続し、在留期間更新を適当と認める相当の理由があることを示しています。標準処理期間は2週間から1か月、許可時の手数料は窓口申請6,000円、オンライン申請5,500円です。
経営・管理ビザの更新で特に見られやすいのは、実務的には次の点です。
- 事業が実際に行われているか
- 申請人が本当に経営・管理に関与しているか
- 事業所が実在し、継続しているか
- 今後も事業を継続できる見込みがあるか これは「経営・管理」の該当性・基準適合性の公表内容から導かれる実務上の整理です。
2. 売上は大事。でも「高ければ勝ち」ではない
経営・管理ビザ更新では、もちろん売上は重要です。
ただ、売上が高いか低いかだけで機械的に決まる制度ではありません。
出入国在留管理庁の公表資料では、「経営・管理」の判断にあたり、事業所の存在、事業規模、経営又は管理への実質的参画が前提とされています。さらに、2025年の制度改正案内でも、事業計画書について具体性・合理性・実現可能性を専門家確認の対象にする方向が示されています。つまり、数字だけでなく、その事業が合理的に成り立っているかが見られているわけです。
たとえば、次のようなケースでは見え方が違います。
- 売上はまだ小さいが、毎月の取引があり、顧客も増えている
- 直近は赤字だが、設備投資や立ち上げ費用の影響で、事業計画に合理性がある
- 売上はあるが、実態が外注任せで本人の経営関与が見えにくい
- 数字は出ているが、事務所や契約、請求・入金の流れが曖昧
つまり、
売上は“結果”として大事ですが、
更新では“その売上がどんな事業実態から生まれているか”も大事です。
3. 赤字でも更新は絶対に無理、とは言い切れない
ここはよく誤解されますが、赤字だから即更新不可と公式に一律で示されているわけではありません。
一方で、更新審査では、引き続き「経営・管理」に該当する活動を行い、在留継続が相当かどうかが見られるため、赤字が続く場合は事業継続性の説明が重要になると考えるのが実務的です。これは更新手続の審査基準と「経営・管理」の該当性資料からの整理です。
なので、赤字のときに重要なのは、単に「赤字です」で終わらせないことです。
たとえば、次のような説明材料があると違ってきます。
- 創業初期で広告費・設備費が先行している
- 売上は増加傾向にある
- 主要取引先との継続契約がある
- 今後の受注見込みが具体的にある
- 役員報酬や固定費を含めた資金計画が整理されている
赤字そのものより、
「赤字の理由が説明できるか」
「今後も続けられるか」
が大事です。
4. 事業実態とは、何を見られているのか
「事業実態」という言葉は少し広いですが、経営・管理ビザ更新で実務的に見られているのは、ざっくり言うと
“本当に会社が動いているか”
です。
出入国在留管理庁は、「経営・管理」の該当性について、事業の運営に関する重要事項の決定、事業の執行又は監査の業務に従事していることを要するとしています。さらに、必要書類として、登記事項証明書、事務所の賃貸借契約書、不動産登記事項証明書、会社案内、決算文書、事業計画書などの提出を求めています。
つまり、事業実態を示すためには、たとえば次のような資料が意味を持ちます。
- 会社の登記事項証明書
- 事務所の賃貸借契約書
- 会社案内やホームページ
- 決算書、総勘定元帳、試算表
- 請求書、発注書、契約書
- 銀行口座の入出金履歴
- 納税資料
- 取引先一覧
- 従業員の雇用状況がわかる資料
このあたりが揃っていると、
「箱だけある会社」ではなく、
「中身が動いている会社」
として見せやすくなります。
5. 事務所の存在は軽く見ない
経営・管理ビザでは、**事業所の確保(存在)**が基準適合性の一つです。出入国在留管理庁もその点を明示しています。
更新でも、事務所がきちんと維持されているかはかなり重要です。
特に注意したいのは次のようなケースです。
- 契約名義が会社ではなく個人だけになっている
- 住居兼事務所で、事業スペースの独立性が弱い
- 実際には使っていない住所だけ残っている
- 郵便受けだけのように見える
事務所は、ただ住所があるだけではなく、
事業の拠点として使われているか
が大事です。
更新時にここが弱いと、売上以前のところで疑問が出やすくなります。
6. 「本人が経営している」ことも示す必要がある
経営・管理ビザは、会社が存在するだけでは足りません。
その外国人本人が、実質的に経営又は管理に参画していることが必要です。出入国在留管理庁もそこを明確にしています。
そのため、更新時には次のような点も整理したいところです。
- 本人が代表者・取締役として意思決定しているか
- 契約や営業活動に関与しているか
- 会計・採用・事業計画などを統括しているか
- 現場の単純作業だけに埋もれていないか
これは地味に大事です。
会社が忙しくなると、代表者本人が配達、接客、作業に追われがちですが、**「経営者として何をしているか」**が見えないと苦しくなります。
7. 小規模事業ほど「説明力」が重要
大企業や長年の安定企業に比べると、小規模事業や創業間もない会社は、どうしても数字だけでは弱く見えやすいです。
だからこそ、更新時には補足説明の質が重要です。
たとえば、次のような整理は有効です。
売上が小さい場合
- 立ち上げ初期であること
- 月次売上の推移
- 主要顧客の継続性
- 今後の受注見込み
赤字の場合
- 赤字の原因
- 一時的要因か継続的要因か
- 改善策
- 資金繰り計画
事業実態が伝わりにくい場合
- 商流の説明
- どのサービスを誰に売っているか
- 取引の流れ
- 本人の役割
入管にとっては、会社の日常を見ているわけではないので、
見えないものは、資料で見せるしかない
のです。ここ、経営者としては少し面倒ですが、かなり重要です。
8. 更新時に出したい資料の考え方
出入国在留管理庁は、「経営・管理」の必要書類として、申請書のほか、写真、パスポート、在留カード、会社関係資料、事業所資料、登記事項証明書、定款、決算文書、事業計画書などを案内しています。また、提出書類が不足していると審査が大幅に遅れたり、不利益処分になり得ると明記しています。さらに、審査過程でページ記載外の資料を求める場合があるとも案内しています。
実務上は、最低限の必要書類だけでなく、次のような“補強資料”を意識すると安心です。
- 月次試算表
- 法人税申告書控え
- 消費税申告書控え
- 取引先との契約書
- 請求書・入金記録
- 会社パンフレットやWebサイト
- 商品・サービス資料
- 従業員の給与支払資料
- 役員報酬の支払資料
- 今後1年の事業見通し
「言えばわかるはず」ではなく、
書類でわかる形にするのがコツです。
9. こんなケースは特に注意
次のようなケースは、更新時に慎重な整理が必要です。
- 売上がほぼ立っていない
- 長期間赤字が続いている
- 実態ある取引資料が乏しい
- 事務所の使用実態が弱い
- 本人が経営ではなく現場作業中心に見える
- 会社口座と個人口座の区別が曖昧
- 税務申告や納税に不備がある
特に、数字が弱い+実態資料も弱いの組み合わせは危険です。
逆に言うと、数字がまだ弱くても、実態と改善計画がしっかりしていれば戦いやすくなります。
10. まとめ
経営・管理ビザ更新で重要なのは、売上の大きさだけではありません。
出入国在留管理庁の公表内容から見ても、ポイントは、事業所の存在、事業規模、申請人の実質的経営参画、そして継続してその活動を行う相当性にあります。
押さえたいポイントをまとめると、次のとおりです。
- 売上は大事だが、金額だけで決まるわけではない
- 赤字でも理由と改善見込みの説明が重要
- 事業実態は、契約・請求・入金・事務所・会社運営の資料で示す
- 本人が経営者として何をしているかを見せる
- 小規模事業ほど、補足説明と資料の組み立てが重要
つまり、経営・管理ビザ更新は
「売上があるか」だけの審査ではなく、
「この事業が本当に回っていて、これからも回るか」の審査
と考えるとわかりやすいです。
ご相談について
経営・管理ビザの更新は、
「赤字だけど大丈夫か」
「役員報酬をどう見直すべきか」
「売上が小さいが、どの資料を足せば実態が伝わるか」
で悩みやすい分野です。
